認知症と糖尿病を併せ持つ方への多面的支援|服薬・食事・生活管理の工夫
【お名前】Sさん(仮名)
【年 齢】85歳
【疾患名】アルツハイマー型認知症、2型糖尿病
【要介護認定】要介護3
訪問看護介入までの経緯
Sさんは数年前にアルツハイマー型認知症と診断され、最近では短期記憶の障害により薬の飲み忘れや食事内容の偏りが目立つように。糖尿病の管理も困難となり、血糖コントロールの乱れが懸念されていました。ご家族から「どう支えたらよいか分からない」との相談があり、主治医の指示によりましろ訪問看護ステーションが介入。多面的な支援がスタートしました。
看護師からのアセスメント
初回訪問時、ご本人は穏やかな表情で迎えてくださったものの、服薬の時間や種類については理解が曖昧で、食事も「食べた気がする」との自己申告に頼っていました。ご家族は毎食の管理に疲弊しており、本人の尊厳と生活の質を保ちつつ、糖尿病管理を継続するためには、服薬・食事・生活支援を一体的に整える必要があると判断しました。
提供したケア/リハビリ
訪問時は、血糖測定・バイタルチェック・インスリン注射の確認を実施し、薬の管理には1包化+服薬カレンダーを導入。食事はご家族と一緒に、「分かりやすい」「続けやすい」メニュー提案と、調理サポートを行いました。また、日課として軽い体操と散歩を生活に組み込み、生活リズムを安定させることで血糖変動の抑制を目指しました。
訪問看護介入の結果としてのアウトカム
血糖値の変動幅が安定し、インスリンの適切な自己管理が継続できるようになりました。ご本人は「忘れているのではないかと不安になることが減った」と話すようになり、ご家族も介助負担が軽減。「ひとつずつできるようになった実感がある」との声もあり、本人・家族ともに安心感が向上。ご家族と伴奏しながらの多面的な支援が、心身の安定と自己効力感の回復につながりました。
介入した看護師からのコメント
「認知症と糖尿病が重なると、“正しく管理すること”だけを求めがちですが、大切なのは“生活の中で無理なく続けること”だと思っています。Sさんは、自分のペースで取り組めるようになり、少しずつ“できている実感”が育っていきました。私たちは、その“できる瞬間”を支える存在でありたいと思っています。」
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