医療的ケア児の在宅生活を支える訪問看護の役割とは
【お名前】Hくん(仮名)
【年 齢】5歳
【疾患名】専制性多発奇形・気管切開・胃瘻造設
【要介護認定】小児特定医療的ケア児(医療的ケア児支援法対象)
訪問看護介入までの経緯
Hくんは先天的な奇形により生後から複数臓器に異常を認め、現在は気管切開と胃瘻での栄養管理が必要な状態です。退院後、母親が24時間体制で介護を続けていましたが、成長とともに医療処置の負担や精神的ストレスが増大。
「医療的なことは自分だけでは限界」とご家族が感じ、主治医と連携してましろ訪問看護ステーションの介入が始まりました。
看護師からのアセスメント
初回訪問時、Hくんは安定した表情で過ごしていましたが、気管カニューレの管理や痰の吸引が頻回に必要な状況でした。母親は処置には慣れているものの、慢性的な睡眠不足と不安が強く、「自分が倒れたらどうしよう」と涙ながらに話されました。
子どもの状態に加えて、ご家族の支えが急務であり、医療・心理の両面からの支援が必要と判断しました。
提供したケア/リハビリ
訪問看護では、バイタルチェック、気管内吸引、胃瘻管理、皮膚トラブルの確認を行いながら、ご家族への技術指導や再確認も実施。急変時対応のマニュアルを整備し、24時間相談可能な体制を構築しました。
また、理学療法士と連携し、排痰を促す呼吸練習や体位交換を実施。母親には休息の時間を作れるよう、日中のショートステイや訪問看護時の“レスパイト”も支援しました。
訪問看護介入の結果としてのアウトカム
訪問開始からしばらくすると、痰の気道閉塞による呼吸困難感は減少。感染リスクの低減や呼吸状態の把握が的確に行えるようになりました。
母親も状態に対しての理解や安心が増えたのか、笑顔が少しずつ多くなりました。「前より自信を持ってケアできるようになった」と話すようにもなりました。突発的な症状変化にも迅速に対応でき、入院の回避にもつながりました。家族にとって“誰かがそばにいてくれる”という支えが大きな安心材料となっています。
介入した看護師からのコメント
「医療的ケア児への支援は、ご本人だけでなくご家族の生活や心の支援も不可欠です。Hくんのお母様はとても献身的で、でもそれゆえに限界を抱えていました。私たち訪問看護師は、“ご家族が倒れないための支え”としても存在したい。これからも安心して笑える日常が続くよう、チームで見守っていきます。」
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