認知症の方のための訪問看護|徘徊・幻覚・暴言などへの対応事例
【お名前】Sさん(仮名)
【年 齢】82歳
【疾患名】アルツハイマー型認知症
【要介護認定】要介護2
訪問看護介入までの経緯
Sさんは数年前から物忘れが進行し、最近では「人が家にいる」と訴える幻覚や、夜間の徘徊が見られるようになりました。ご家族が目を離せない状態が続き、介護疲れも深刻化していました。
ケアマネージャーを通じて医師の指示のもと、ましろ訪問看護ステーションが介入することに。精神的ケアと安全な生活環境づくり、ご家族の介護負担軽減を目的とした支援が始まりました。
看護師からのアセスメント
初回訪問では、ご本人の表情は穏やかでしたが、すぐに場面が切り替わり、「知らない人がいる」と警戒心を示す様子が見られました。日中の活動量が少なく、夜間に不穏になる傾向が強い状態。服薬の自己管理は難しく、幻覚・被害妄想による家族とのトラブルも見受けられました。環境調整・生活リズムの再構築・安心できる関わりが必要と判断しました。
提供したケア/リハビリ
訪問看護では、服薬確認・バイタルチェックとともに、日中の活動量を増やすための散歩や軽い体操、会話を積極的に行いました。幻覚や妄想に対しては否定せず、「それは怖かったですね」と共感しながら安心感を与える対応を継続。
ご家族には声のかけ方や対応方法を具体的に指導し、夜間徘徊への備えとして環境の見直し(センサーライト・鍵の工夫、GPSの装着)も提案しました。
訪問看護介入の結果としてのアウトカム
生活リズムが整い薬も規則正しく飲めるようになった成果か、夜間の徘徊が減少し、日中の不穏も軽減。ご本人は落ち着いた表情を見せることが増え、訪問時も笑顔で迎えてくださるようになりました。
ご家族も認知症の母への対応方法を知ることで、「以前よりも気持ちに余裕ができた」とのお声をいただき、介護への前向きな姿勢が見られるようになっています。
介入した看護師からのコメント
「Sさんはとても感受性が豊かで、ちょっとした言葉や表情にも強く反応される方でした。だからこそ、“居心地のいい空気感”をつくることを意識して関わってきました。ご家族もとても熱心に学んでくださり、今では日々の介護に前向きに取り組んでおられます。
認知症ケアは“チームケア”の力で支えるものだと改めて感じたケースです。」
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