自宅で最期を迎える選択をした方へ|ターミナルケアと訪問看護
【お名前】Iさん(仮名)
【年 齢】74歳
【疾患名】
乳がん(多発骨転移あり)
【要介護認定】要介護4
訪問看護介入までの経緯
Iさんは乳がんの再発により骨転移が認められ、治療の方針は緩和ケアへと移行しました。入院よりも「安心できる自宅で過ごしたい」というご本人の強い意向を尊重し、ご家族と主治医の同意のもと、訪問看護を導入。
痛みのコントロールや日常生活の支援を通じて、ご本人の「最期まで自分の家で暮らす」想いを支える体制がスタートしました。
看護師からのアセスメント
訪問の初期段階では、痛みの訴えが強く、鎮痛剤の効果にも波がありました。また、日によって倦怠感が強く、ベッド上での生活が中心でしたが、ご本人は「家で過ごせることに感謝している」と穏やかに話されていました。
ご家族は医療的対応に不安を抱えており、適切なタイミングでの情報提供と精神的な支援が必要と判断されました。
提供したケア/リハビリ
疼痛管理を目的に、座薬や経口薬の効果と副作用をモニタリングしながら常に訪問診療の主治医と連携し服薬調整を行いました。便秘や食欲不振への対応、皮膚ケアや清拭などの清潔保持、体位交換による褥瘡予防も併せて実施。週1回は看護師と一緒に写真を見たり、音楽を聴いたりする時間を取り、ご本人が心安らぐ時間を持てるよう工夫しました。
家族には介護技術や緊急時対応の方法も丁寧に共有しました。
訪問看護介入の結果としてのアウトカム
介入開始から体調は常に変動しており、疼痛も波があり苦しそうな表情をされることもしばしばありましたが、介入前と比較すると痛みは緩和傾向で、緊急電話が鳴ることも減少傾向となりました。体調が良い日はご本人も穏やかな表情で日々を過ごされ、「家で過ごせるのが嬉しい」と何度も話されていました。
ご家族も看護師との対話の中で少しずつ不安が軽減され、最期の時もご自宅で、ご本人と寄り添って迎えることができました。ケア終了後、「悲しさはもちろんあるけど、お陰様で介護をやりきれました。」と感謝の言葉をいただきました。
介入した看護師からのコメント
「Iさんの『家で最期まで過ごしたい』というお気持ちを実現できるよう、ご本人だけでなくご家族にも医療的・精神的ケアの両面から支援しました。がんの緩和ケアは、単に痛みを和らげるだけでなく、ご本人とご家族の“生活そのもの”を支えることだと改めて実感しました。ご家族の愛情と支えも大きく、私たちも心を込めてケアを届けることができました。」
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