自宅で最期を迎える選択をした方へ|ターミナルケアと訪問看護
【お名前】Sさん(仮名)
【年 齢】80歳
【疾患名】
進行性胃がん(腹膜播種あり)
【要介護認定】要介護5
訪問看護介入までの経緯
Sさんは胃がんの進行により余命宣告を受け、積極的な治療をせず緩和ケアの目的で療養が開始されました。入院中に「病院ではなく、家で最期を迎えたい」と強く希望されたため、主治医・ご家族・ケアマネジャーと連携し、在宅でのターミナルケア体制を整備。
ましろ訪問看護ステーションが24時間体制での訪問看護を担当することになりました。
看護師からのアセスメント
初回訪問時、食事量は著しく低下し、腹部膨満感と倦怠感が強く、ADLは重度介助〜全介助レベルでした。疼痛は軽度ながら、精神的な不安や不眠が見られ、ご本人は「このまま弱っていくのが怖い」と吐露。ご家族も「家で看取ることに不安がある」と話され、医療的支援と同時に、心理的なサポートや急変時の対応準備が必要でした。
提供したケア/リハビリ
症状緩和を中心に、痛み止めや吐き気止めなどの薬剤調整を行いながら、体位変換・口腔ケア・清潔保持を実施。夜間の不安には看護師が電話対応し、必要に応じて臨時訪問も行いました。また、ご家族に対しては終末期で起こりうる状態変化や看取りの流れについて丁寧に説明し、安心して寄り添えるようサポート。
本人の「音楽を聴きながら過ごしたい」という希望も叶える工夫をしました。
訪問看護介入の結果としてのアウトカム
Sさんは徐々に食欲がなくなり、体力も落ちていきましたが、苦痛を感じる時間は減っていきました。ご家族は日々の体調変化に戸惑いながらも、看護師と連携する中で「家で見送る覚悟」ができてきている様子でした。
ご本人は旅立つ前夜、「そばにいてくれてありがとう。」と話し、ご家族に見守られながら自宅で安らかに息を引き取られました。
介入した看護師からのコメント
「家で最期を迎えたい」というSさんの想いに応えるため、何がSさんにとって安心か、を常に考えながら寄り添う関わり方を大切にしました。終末期においてご本人だけでなくご家族の想いも強く交錯する中で、私たちは医療者として、また“人として”、最期の瞬間に寄り添えたことに感謝したいと思います。ご自宅で最期を迎えるということの意味を深く感じました。」
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