がん末期の症状緩和と心のケア|訪問看護の具体的な対応とは
【お名前】Nさん(仮名)
【年 齢】69歳
【疾患名】
肺がん(終末期、脳転移あり)
【要介護認定】要介護5
訪問看護介入までの経緯
Nさんは肺がんの進行により、緩和ケア中心の療養に移行。
自宅での生活を希望されましたが、症状の悪化や脳転移による意識変容も見られ、家族が「不安で対応できない」と感じていました。主治医やケアマネジャーの勧めで訪問看護を導入し、身体的な苦痛の緩和と、ご本人・ご家族の不安に対応できるようケア体制がスタートしました。
看護師からのアセスメント
訪問時、ご本人は強い倦怠感と息苦しさを訴えており、微熱や食欲不振も見られました。
時折混乱や焦燥が現れ、不安が強い様子でした。ご家族も「声をかけるたびに違う反応が返ってきて戸惑う」と不安を抱えていました。がん末期に見られる身体的・精神的症状が複雑に絡み合っていたため、きめ細かな観察と緩和的アプローチが求められました。
提供したケア/リハビリ
疼痛・呼吸困難感に対する薬剤調整に加え、酸素療法や体位変換、口腔内の乾燥ケアを実施。精神的苦痛に対しては、ゆっくりとした声掛けや、好きだったクラシック音楽を流すなど、安心できる環境作りを重視。看護師が毎回表情・発言をこまかく記録し、医師との情報共有により、症状変化に迅速に対応しました。
ご家族には「感情の揺れは病気の一部」と伝え、冷静に対処できるようケアを共に行いました。
訪問看護介入の結果としてのアウトカム
徐々に意識レベルの低下が見られましたが、身体的苦痛は最小限にコントロールされ、苦しみにより緊急電話を鳴らす回数は減少しました。ご本人は穏やかな表情を見せることが増え、ご家族も「今は痛くないんだね」と安心して声をかけられるようになりました。
介護への恐怖心を抱えつつも、「一緒にいられる時間が大切」と語る姿に介護への覚悟を持たれたような変化が見られました。ご本人は静かに、ご家族に見守られながら旅立たれました。
介入した看護師からのコメント
「がん末期の方にとって、痛みや呼吸の苦しさだけでなく、心の揺れや孤独感を強く感じることが多いため、そこにどう向き合うかが重要だと感じました。Nさんが安心して過ごせるよう、身体だけでなく“その人らしさ”に寄り添うケアを意識しました。ご家族も本当に温かく関わってくださり、在宅ケアの力をあらためて実感したケースだったと思います。」
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