小児・医療的ケア児・重症心身障害児


【お名前】Mくん(仮名)
【年 齢】4歳
【疾患名】自閉スペクトラム症(ASD)、感覚過敏、言語発達遅滞
【要介護認定】障害児(障害児通所支援対象)


訪問看護介入までの経緯

Mくんは2歳頃からことばの遅れが目立ち、3歳時に自閉スペクトラム症と診断されました。大きな音や特定の触覚に対して強い反応を示す感覚過敏があり、通園も困難に。ご家族は「どう関わればよいか分からない」と戸惑い、外出や人との関わりを避ける日々が続いていました。
発達外来と保健センターを通じて、ましろ訪問看護ステーションの支援がスタートしました。

看護師からのアセスメント

初回訪問では、Mくんは言葉での応答は難しいものの、視線や行動から興味のあるものに対する反応が見られました。音や光への感覚過敏が顕著で、突然の物音や特定の素材に対して激しく拒否する場面もありました。
ご家族は「怒っているのか、何か苦しいのかが分からない」と不安を抱えており、感覚特性への理解と、安心できる生活リズムの構築が必要と判断しました。

提供したケア/リハビリ

訪問看護では、作業療法士と連携し、Mくんが安心できる空間と関わり方を第一に、視覚的なスケジュール提示や、好みのおもちゃ・音楽を通じたコミュニケーションを試みました。過敏な刺激(大きな音・触れられること)を避けつつ、少しずつ刺激への慣れを促すアプローチも実施。
ご家族には「怒っているわけではなく、“違和感”を表現している」と感覚特性への理解を深める支援を行いました。

訪問看護介入の結果としてのアウトカム

Mくんは訪問看護師、作業療法士に徐々に慣れ、好きな遊びを通じて笑顔を見せるようになりました。感覚過敏によるパニックの頻度が減り、日常生活の安定につながっています。ご家族からは「どう対応していいか分からなかった不安が減った」との声があり、子どもへの接し方にもゆとりが見られるように。
外部サービス(療育・保育)へのつなぎも支援し、地域とのつながりも形成されました。

介入した看護師からのコメント

「ASD児の支援では、“普通”の関わり方が必ずしも正解ではありません。Mくんの“感じ方”を尊重しながら、安心できる関係性を築いていくことを大切にしました。ご家族が“分かってあげられるようになった”と笑顔で話された時、支援の意味を強く感じました。今後も家庭と地域をつなぐ存在として支援を続けていきます。」

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