事例紹介 -Case study-
【お名前】A氏(仮名)/ 90代前半
【疾患名】転移性肝腫瘍、胃がん術後、大腸がん術後
【要介護認定】要介護3
胃癌および直腸癌の術後、食事の1回摂取量が減少傾向にあります。また、手術により直腸を摘出したため、排便コントロールが困難となり、外出機会や運動・活動量が減少していました。
転倒や状態の悪化を防ぎ、生活状況を維持するために、息子様からの希望により、看護師が訪問して排便コントロールを行い、療法士が訪問してリハビリを実施し、身体能力の維持をサポートするサービスが開始されました。
元々は自宅周りの散歩を欠かさず行っていたが、介入当初は散歩に出かけることはほとんどない状況でした。


アセスメント
農業をされていたこともあり、体力には自信をお持ちでしたが、手術後は食事量や運動量が減少し、労作時の呼吸困難も増強し、自宅で横になることが多くなっていました。
また、室内移動を含めて身の回りのことは自身で行えていたものの、筋力低下により円背が強まり、昔ながらの家屋のため段差が多く、転倒リスクが高いと考えられました。
リハビリでは、ADL(Activities of Daily Living)を維持しつつ、転倒を防ぎ、単独で散歩に出かけられることを目標に設定しました。目標達成のためには、常に導線を確認し、役割を持っていただくことで活動量を増加させ、積極的に運動や散歩を行い、筋力・体力の向上と意欲の向上を図る方針としました。
提供したケア/リハビリ
2名の理学療法士が連携しながら介入を行いました。
<主なリハビリ内容>
・ご本人およびご家族からの状態や生活状況の聴取
(自発的な不調の訴えはあまりなく、「何でも大丈夫」と心配をかけないような発言が多く、バイタルサイン・筋緊張・動作の反応を観察し体調の変化や過剰な努力による不安定さを判断。)
・可動域運動(特に首、肩、胸椎)、足腰の筋力強化、立位バランス練習、ADL練習(トイレや入浴動作、階段昇降)、屋外での長距離歩行
・生活の中で役割を持つ促しと見守り(神棚にお供え物を自分で持っていくことが日課だったため、その導線確保と動作の確認・練習)
・体調に変化があった際には、ご家族や看護と情報を共有。
<意識したこと>
息子様はよく本人の様子を観察されていたため、毎回状態や生活状況等の情報を聴き、散歩時の息切れが増強したことに関して呼吸リハビリの相談があった際には、呼吸器疾患はなく円背の進行による呼吸苦であると説明しリハビリの際に伏臥位を取り入れました。
また、段差昇降が大変になってきているとのお話を受けて、段差昇降動作の安定化のための練習を開始、さらに、食事の時間が遅くなったという相談に基づき、嚥下機能の低下よりも姿勢の影響が大きいと判断し、嚥下体操に加えて姿勢改善のための頸部の運動を追加しました。
アウトカム
90歳を迎えた現在も、転倒や状態の悪化なく自宅で過ごされています。
昨年感染症に罹患し体力が低下しましたが、その後も自宅内では自立して歩けています。孫やひ孫が集まる際には、自ら輪の中に入り、笑顔で過ごすなど、意欲を保っています。トイレの処置や神棚へのお供えなど、物を持ちながらの移動も安全に行えています。
散歩の機会は減少傾向にありますが、時折実施し、庭の植物に関する話題を明るい表情で話してくれます。

ご利用者からのコメント
ご本人
「自分だけではなかなか運動できないので、来てもらえて助かっています。」
お嬢さん
「定期的に訪問が入ってくれることで張り合いが生まれ、本人にとっても良い影響があると感じています。」
ご子息
「生活にメリハリがついただけでなく、年齢とともに進行する老化を緩やかにしてくれたと感じています。その成果もあり、今も負担なく動けていると思います。」
訪問看護師からのコメント
ご本人様は、体調を伺うと気遣いからか「大丈夫!」とニコニコされていましたが、訪問時には日常生活での行動を予測し、ご家族様から普段の様子をお聞きすることで、想像と実際の状況との差を修正するよう意識していました。
散歩後の息切れや段差昇降時の不安定さ、食事中の咽せなどについてお話があった際、その時の心身機能を評価した上で、ご家族と対応方法を検討し実施した結果、改善が見られた時は嬉しく感じました。
今後もご家族とのコミュニケーションを大切にし、常に日常生活状況を把握しながら支援を続けていきたいと思います。

■ 名前:内海(ウツミ)
■ 資格:理学療法士
■ 臨床経験
病院勤務時は、入院・外来の整形外科疾患・脳血管疾患・循環器疾患・呼吸器疾患や外科手術前後・ガン末期、ICUでのリハビリなど、広く担当をしていました。
訪問を始めて10年以上になります。
特定の分野にこだわらず、幅広く対応していくことを心掛けています。
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